2015年 09月 05日
「ザ・原発所長」黒木亮、朝日新聞出版 |
福島原発の吉田所長をモデルにした小説。少年時代から原発事故後、癌で亡くなるまでを描いている。よくある官邸無能、所長礼賛のタイプだが、原発の構造や事故の流れなどはよく取材して書き込んである。
公開された吉田調書もよく読んで反映しているようだ。経歴から見ると吉田所長の原発での専門は補修関係にあり、運転や安全対策に強いというわけではないようだ。東京電力自体が自ら宣伝している原発の安全神話に侵されて、この小説にもあるように安全装置までもが経費節減の対象にされるようになって、安全への配慮が少しずつ形式化していたのではないか?吉田氏自身過酷事故に対処する訓練など積んでおらず、吉田調書を分析すれば数々の判断ミスや対応への疑問が指摘されている。突然の事故で過酷な状況での対応であったことは理解できるが、そこでの失敗が恐ろしい結果を招くことを考えれば、事前に充分な訓練が必要だった。
吉田氏はGE社員の内部告発の後始末にかかわっており、福島第一への津波が15.7mになるという予測に対応すべき役割も担っていた人物である。東京電力という企業の中で安全神話に絡めとられ、安全神話を再生産し、過酷事故に巻き込まれたのちに亡くなった、残念な人生だと感じてしまう。
この小説の中で一つ嫌な表現があった。本編と何の関係もない、ただ所長がファンだったという絡みの中で、阪神タイガースのある選手が在日韓国人であると書いているのである。
本人が公表しているわけでもないのに、関係のない小説でなぜ暴くように表現する必要があるのだろう。強い違和感を覚えた。
公開された吉田調書もよく読んで反映しているようだ。経歴から見ると吉田所長の原発での専門は補修関係にあり、運転や安全対策に強いというわけではないようだ。東京電力自体が自ら宣伝している原発の安全神話に侵されて、この小説にもあるように安全装置までもが経費節減の対象にされるようになって、安全への配慮が少しずつ形式化していたのではないか?吉田氏自身過酷事故に対処する訓練など積んでおらず、吉田調書を分析すれば数々の判断ミスや対応への疑問が指摘されている。突然の事故で過酷な状況での対応であったことは理解できるが、そこでの失敗が恐ろしい結果を招くことを考えれば、事前に充分な訓練が必要だった。
吉田氏はGE社員の内部告発の後始末にかかわっており、福島第一への津波が15.7mになるという予測に対応すべき役割も担っていた人物である。東京電力という企業の中で安全神話に絡めとられ、安全神話を再生産し、過酷事故に巻き込まれたのちに亡くなった、残念な人生だと感じてしまう。
この小説の中で一つ嫌な表現があった。本編と何の関係もない、ただ所長がファンだったという絡みの中で、阪神タイガースのある選手が在日韓国人であると書いているのである。
本人が公表しているわけでもないのに、関係のない小説でなぜ暴くように表現する必要があるのだろう。強い違和感を覚えた。
by furisu21
| 2015-09-05 10:42
| 読書録