2011年 08月 21日
今週読んだ本、「終わらざる夏」浅田次郎著、集英社 |
暑い日の続く8月、マスコミが原爆・終戦特集を組んでいる中、「終わらざる夏」を読んだ。1945年の夏、千島列島の北の端の島、占守島(シュムシュ島)に集められた日本兵とその周辺の人々の物語だ。戦争という理不尽な行いに巻き込まれた人々が、どのような思いで日常生活を送り、厳しさを増す戦況の中で人間らしい思いや暮らしを奪われていったかが描かれている。力量のある人気作家の浅田氏が丹念に取材を行い、人々の物語を丹念に描きながら、その時その場所に物語を収れんさせていく。
「戦争がこんなにも理不尽なものと知ったからには、人間は二度と戦争などしないだろう。」と物語の中心人物片岡直哉は綴っているが、残念ながら人間はそこまで賢くはなかったようだ。8月15日天皇が戦争の終結を宣言したが、占守島の悲劇はそれから始まり、今も地球上のどこかで戦争が続いている。
少なくとも平和に8月を送っている自分に比べ、この時の人々はなんと悲しい日々を送らねばならなかったのか。平和を守るための努力を忘れずに続けなければ、また戦いの悲劇に巻き込まれる可能性があることを心しなければならない。
ただ最後の方でロシア兵士が独白の中で、占守島の日本軍が強かったのは自分たちの国土を守るためだったからだというのは違和感を感じた。北千島、クリル島は本来クリル人の島だ。国家組織が拡大していく中で、日本やロシアが領有権を主張したに過ぎない。たまたま西方から連れてこられたロシアの少数民族の兵士が、東方の北の端の島を日本の島のように報告するのは現実的でない。現在の北方領土問題におもねっているような気がする。
あり得ない主人公の子ども達との交流を書くよりも、少数民族として描くなら、むしろ「カムイ、ウン、クレー(神、われらを造りたもう)」クリル人との交流があった方が良かったように思う。
「戦争がこんなにも理不尽なものと知ったからには、人間は二度と戦争などしないだろう。」と物語の中心人物片岡直哉は綴っているが、残念ながら人間はそこまで賢くはなかったようだ。8月15日天皇が戦争の終結を宣言したが、占守島の悲劇はそれから始まり、今も地球上のどこかで戦争が続いている。
少なくとも平和に8月を送っている自分に比べ、この時の人々はなんと悲しい日々を送らねばならなかったのか。平和を守るための努力を忘れずに続けなければ、また戦いの悲劇に巻き込まれる可能性があることを心しなければならない。
ただ最後の方でロシア兵士が独白の中で、占守島の日本軍が強かったのは自分たちの国土を守るためだったからだというのは違和感を感じた。北千島、クリル島は本来クリル人の島だ。国家組織が拡大していく中で、日本やロシアが領有権を主張したに過ぎない。たまたま西方から連れてこられたロシアの少数民族の兵士が、東方の北の端の島を日本の島のように報告するのは現実的でない。現在の北方領土問題におもねっているような気がする。
あり得ない主人公の子ども達との交流を書くよりも、少数民族として描くなら、むしろ「カムイ、ウン、クレー(神、われらを造りたもう)」クリル人との交流があった方が良かったように思う。
by furisu21
| 2011-08-21 12:37
| 読書録